「ルルーシュ?」

斑鳩のゼロの私室。
先にルルーシュが戻っているはずだったが、室内の明かりは落とされたままだ。不思議に思ったC.C.は、蛍光灯のスイッチを入れて声をかける。
返答が返らないままC.C.が部屋に足を踏み入れると、ルルーシュの姿はソファの上にあった。

「…やはり、相当疲れがたまっていたようだな」

くすりと笑みを浮かべたC.C.は寝入るルルーシュの傍らに腰かけ、きっちりと着込んだままのスカーフや上着のボタンを外してやる。
普段であれば仮面を外したままの状態で寝てしまうことなどルルーシュはしない。
余程、現状がルルーシュに負担をかけているのだろう。
一年前とは違い、ルルーシュは一度失敗している。そのため今回は、前回よりも手の込んだ作戦が必要になる。

「すまない…だが、私にはお前が必要だ」

C.C.は誠意を込めた謝罪を口にし、ルルーシュの前髪を母親がするような手つきで梳いた。
ルルーシュがマリアンヌの血を引く悲恋の子に生れ落ちた時から、この運命は決まっていた。
けれど、ここまで優しさに満ちた者が過酷な運命に晒されているのは、さしものC.C.にも辛いものがあった。
例えC.C.自身が全てのからくりに通じるものであっても。

「わかっているさ、マリアンヌ。ルルーシュが起きている時には口にしないさ」

時折、自分に話しかけてくるマリアンヌの言葉にC.C.は苦笑した。 こんなしおらしい態度など、ルルーシュに見せるつもりなどC.C.にはさらささらない。 最後の最後まで、C.C.はルルーシュの共犯者として付いていくと決めたのだから。

「…ああ、どおりで。そうか、今日は夏至か…」

C.C.の言葉に安心したようにマリアンヌがかけた次の言葉に、C.C.は合点がいったと呟く。
そして、ルルーシュの額に手をかざす。

「なに、安心しろ。少しくらいなら構わないさ。今宵は年に一度の夜なのだから」

C.C.は自分の手のひらが少し熱をもってきたことがわかった。
いつも使う力とは別の力。
常は、無理をしなければ使用できない力だが、今宵は力が増す夏至の夜。

「よい夢をルルーシュ」

辛い現実から目を背けさせるわけではないが、せめて夢の中では「幸せ」に包まれていて欲しい。
そう思いながら、C.C.は優しく声をかけた。

果たして、ルルーシュの夢はC.C.の望んだものだったのだろうか。
真実は、ルルーシュのみが知ることだった。

ルルーシュの「幸せな夢」の相手って?
※ちなみに「夢」の中では唐突にオリキャラが出てくるのでご注意ください

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