「ルルーシュ様、お気づきになられましたか?」
うっすらと目を開ければ、そこには心配顔の侍女がいた。ルルーシュが黎家に嫁してからよく仕えてくれる者だ。
周囲を見渡せば、そこはすっかり見慣れた自室。ぼおっとした頭で起き上がろうとすれば、上半身を寝台に起こしただけで少し眩暈がした。
「ルルーシュ様!」
こめかみを押さえて上半身をぐらつかせたルルーシュを侍女が慌てて支える。その慌てぶりが何故か常とは違う。
なんだ? とルルーシュは不思議に思った。だが、それよりも今の自分の置かれている状況の方が気になった。
「わたし、は…?」
ルルーシュは確か星刻と共にこの部屋にいたはず。いつもは、ルルーシュが許さない限り侍女たちが部屋に入ってくることはない。
しかも、いつの間にか夜は明け、柔らかな陽光が部屋の中に差し込んでいる。
「ルルーシュ様、覚えていらっしゃいませんか? 昨夜お倒れになったんです。それでお医者様をお呼びして…」
「た、おれた?」
少し話しただけで、ルルーシュはごほっとむせてしまった。侍女が傍らに用意してあった花茶をさっとルルーシュに差しだす。
手を伸ばして口に含めば、喉を心地よく潤してくれたが、それはルルーシュに驚きをもたらした。
「この茉莉花茶」
ルルーシュが好む茉莉花茶の中でも格別好きだと思っていた、天子のところで供される茉莉花茶と同じものだ。今までこの茶が黎家で用意されたことはなかったはずだ。
「本当は口止めされていたのですが…」
独り言のようにルルーシュが茶のことを呟くと、侍女が小さな声でルルーシュの疑問を解いてくれた。
「旦那様がルルーシュ様に、と。花茶をよく召し上がっていることを旦那様にお話ししましたら、宮中でルルーシュ様が好んでいる茶だからとこの茶葉を。天子様の直轄領で栽培されているものですから滅多に手に入らないものなのですが…。星刻様もルルーシュ様のために八方手を尽くしたようですわ」
満面の笑みで侍女は語った。
「星刻が…」
「お恥ずかしかったようで口止めされましたけれどね」
そう侍女は付け足す。
ルルーシュの鼓動は自然と早くなった。
気を失う前に腰を取られ近づいた体温を思いだす。いつも肌を合わせているのに、あんなにも星刻のことをそば近くに感じたことはなかった。
星刻が初めて見せた優しげな瞳や声、素直な謝罪が自分の心の奥深く似届いた気がした。
その一連のことを思い出してルルーシュは急に恥ずかしくなった。あの時にとってしまった態度がまるで年端もいかない少女のように子供がとるものに思えたからだ。
ルルーシュは少しだけ赤くなった頬の熱を冷ますように、乱暴に言った。
「しかし、倒れるとは思わなかったが、医者を呼ぶほどのことではなかった」
確かにここ数日具合が悪かった。だが、食事がのどを通らないことなど昔から多々あったことだし、多少具合が悪くてもいずれ治る範囲のものだと思っていた。
だが、ルルーシュの言葉を聞いた侍女は顔を青くして「とんでもございません! 大切なお体なのですから!」と大声でルルーシュに訴えた。いつもは反論することなどない侍女なので、ルルーシュはとても驚いた視線を向けた。
侍女は、そこではっとして畏まった礼をとった。
「おめでとうございます、ルルーシュ様。お医者様のお見立てでは、ご懐妊とのことにございます」
懐妊。
『ルルーシュ。星刻殿の子を産みなさい』
『ところでルルーシュ様。ご懐妊の方は、まだ……?』
シュナイゼルや大宦官たちから言われた子がついに宿ったのだ。
「子が、か」
「はい、八週目のあたりだということです」
いささか呆然としたようにつぶやくルルーシュに侍女は笑顔だ。だが、段々と何も言わず表情が変わらないルルーシュにその笑顔がしぼむ。
「ルルーシュ、さま?」
「……今日も天子様のところにお伺いする予定だ。すぐに支度を」
侍女は突然そう言いだしたルルーシュに悲鳴のような声をあげて今日くらいはゆっくりして居てくれと懇願した。
しかしいくら止めても聞かず、一人で準備を整えていくルルーシュにしぶしぶといった調子でそれを手伝い始めた。
着なれた中華風のドレスを纏いながら、このドレスなら腹が膨れても問題ないな、などと詮ないことを考えてしまった。
そうして、くれぐれも身に気をつけて、無理をしないようにと言われた。
本当にルルーシュの身を心配している様子だ。少し前なら、家の主人の子を身ごもっているからルルーシュの身を心配するのだと捻くれた考えをしただろう。
だが、公人として立派だと思える主である星刻や、ルルーシュに仕えてくれた仕事ぶりが、ルルーシュに異なる視点を与えていた。
「ところで、星刻はどうしたんだ?」
ルルーシュは準備を終えて車に乗り込む直前に侍女に問うた。こんな風にルルーシュが星刻のことを尋ねたのは初めてだ。
懐妊のことを告げられて混乱していたルルーシュだが、ようやく気を失う前に自分を支えたのが他ならぬ星刻だと思いだしたのだ。
「星刻様は、二週間ほど外国へご出張とのことにございます。高亥様からの急なお呼びたてでして…お医者様が到着なさる前にお立ちになりました。ですので、ご懐妊のことは、まだ」
それはルルーシュの口から言えるようにとの配慮か。
別にルルーシュは自分から懐妊を星刻に告げることに対して何かロマンチックな思いを抱いているわけではない。 だが、星刻がまだ懐妊を知らないということにどこか安堵していた。
車がゆっくりと屋敷をすべり出す。
静かな車内の中でルルーシュは、とてもではないが子供がいるとは思えない自分の薄い腹に手を当ててみた。
「こども」
子供ができると考え方も柔軟になるのだろうか。ルルーシュは今までになく凪いだような気持ちになった。
星刻は、別になんとも思っていない相手だった。
むしろ愛人を囲っていることを知ってからは嫌悪をしていた相手だ。
でも、違う一面を知った。
公人として理想的な男だと知った。自分に力がないことを民に謝罪し、自分にできることをしていた。
私人としても、尊敬できるところがあると知った。
たった数日で星刻に対する印象はすっかり変わってしまった。決定的だったのは、昨夜の出来事だったが。
薄い腹を撫でながら、信じられない思いを抱いた。
さきほど侍女に、星刻がまだルルーシュに子が出来たことを知らないと言われて安心したのは、たぶん、懐妊を知った星刻の態度が変わってしまうかもしれないと恐れを抱いたからだ。
貴族たちの変わり身の早さは身にしみて知っている。
子ができたら用はないとばかりに扱われるのではないかと思ったのだ。
自分に優しさを見せてくれるようになった星刻を失いたくなかった。
「まさか、私が」
この気持ちを何と呼ぶのだろうか。恋や愛と言った確かな気持ちには程遠いもののように感じるが、確かにルルーシュは星刻に対して好意を感じていた。
「ルルーシュ様?」
いつの間にか車は城に到着していたようだ。運転手に声をかけられてはっとした。
ルルーシュは慌てて「すまない」と言い、慣れた足取りで天子の部屋へと歩き始めた。
歩く間も、自分の身に宿っているという子のことを考えずにはいられない。
子を持つのが楽しみ、というわけではない。そういう気持ちを抱く以前に、戸惑いの方が大きかった。
その考えばかりに気を取られていたためか、ルルーシュは近づいてきた気配に声をかけられるまで気づくことができなかった。
「これはこれは、ルルーシュ様。ご機嫌いかがでございましょうか?」
ねっとりとした声がルルーシュの耳を打つ。
「高亥」
星刻の後見である大宦官である高亥がそこにいた。
大宦官はみな一様に虫唾が走るが、特にルルーシュはこの高亥を嫌悪していた。それは、婚儀の席で見た高亥のシュナイゼルに対する態度が、あまりにも媚びていたからだ。
「変わりはない。そなたらに心配をかけるほどのこともない」
「ほほほ。それは重畳でございますね。それはそうと、ルルーシュ様。天子様の礼儀作法はどうでございましょうか?」
高亥は口元を長い袖で押さえて笑った。
しかし、ルルーシュはふと不思議に思った。星刻は外国へ行っているはず。だのに、何故、彼が付いているはずの高亥がいるのだろうか。
「高亥。星刻はいかが致した? 出張だと聞いたが?」
ルルーシュは尋ねてしまった。高亥は、目を細めて笑みをますます深くした。
不快な笑いかただ。
「このたび星刻には先に出てもらいました。私もすぐに向かいますが」
それでは、と言うだけ言って高亥はルルーシュの横を通り過ぎようとした。
長く話すことなどまっぴらなルルーシュは、引き止めなかった。
だが、高亥がルルーシュの横を歩いて行った、その時。
その瞬間、ふわりと花の香りが漂った。それは忘れもしない、あの――。
「高亥!」
ルルーシュは、いささか焦った声音で高亥を呼びとめた。
いやな汗が背を伝わるのを感じる。
「なにか?」
「その香り…我が国の」
言葉尻を濁してルルーシュが言うと、高亥は「ああ」と言ってまたあの笑いを浮かべた。
「以前、帝国領の大使館におりました時、当時、その領を治めていらっしゃったクロヴィス殿下よりいただきました。帝国の方とお会いする際などにはありがたく使わせていただいております」
その瞬間、ルルーシュは自分の体の血の気の下がる音を聞いた気がした。
これが何か? そう、高亥は聞いてきた。
「いや、懐かしい香りだと思ってな。そうか、クロヴィス兄上の…。引きとめてすまなかった」
ルルーシュは精いっぱい、己の動揺を悟られないように淡々とした声音で答えた。
青ざめているかもしれない顔色は大丈夫だろうか。
だが高亥はルルーシュの質問や顔色など気にしたようでもなく、「おなつかしいでしょうね」などと言って、背を向けた。
ルルーシュはしばらくそこで呆然と立ちすくんでしまったが、高亥の背中が見えなくなるとすぐに天子の部屋へと小走りで向かった。
(どうして気が付かなかった!)
ルルーシュは、己のうかつさを呪いたかった。
あの香り。あの薔薇の香りには覚えがあるはずだ。おそらく、帝国貴族であればすぐに気が付く。
あれはルルーシュの異母兄であるクロヴィスが、客人に贈るようになったものだ。
香水の元になる薔薇やその他の花まで、クロヴィスが所有する庭にて作られる香水だ。
それゆえ作られる数は少ない上、持つ者も限られるもの。
この中華連邦で高亥以外に、あれを持っている者がいるとは考えにくい。
あの最初の夜。
ずっと思い出すことを拒絶していたが、あの時、星刻はルルーシュに『愛人』のことを詰られて傷ついたような瞳をした。
あぁ、どうして私は気が付かなかった!
「ルルーシュ様! まぁ、どういたしましたか」
息を乱して天子の部屋にたどり着けば天子はそこにおらず、いつもの女官がそこにいた。
ルルーシュにはその方が好都合だった。
朗らかに笑っていた女官だが、怖いくらい真剣な表情をしているルルーシュに困惑した視線を向ける。
「高亥だな」
ルルーシュが言えば、さっと女官の顔色が変わった。
たった一言で女官は、ルルーシュが何を言わんとしているか悟ったようだ。
「ルルーシュ様…」
その女官の態度が決定打だった。
「星刻に愛人はいない。だが、星刻こそが、そうだったのか」
ルルーシュはくず折れるように、いつも座す椅子に腰かけた。
女官は、「なぜお気づきに?」とルルーシュに尋ねた。
女官が不思議に思うのも仕方がないだろう。つい昨日までルルーシュは、まったくこの事実を知らなかったのだから。
ルルーシュは苦笑いを浮かべた。
「香りがな。星刻から香った薔薇の香水。あれをつけていた。普通のものなら、私だとて気にはしなかった。だが、あれは凝り性のクロヴィス兄上が作らせたもので、ほとんど出回ることはないものだ。この国で、あれを纏っている者があやつ以外いるとは思えぬ」
ルルーシュが疲れた調子で言えば、女官が黙って茉莉花茶を出してきた。
その花茶に、星刻の優しさを思い出してしまう。
「…六年前の罪にかこつけてのことか?」
あの星刻が自らすすんで高亥に繋がれているとは思えなかった。理由があるなら、女官が言葉を濁した六年前に関わることだった。
「はい。ルルーシュ様のご想像通りにございます。星刻様は、五年前に軍部の司令部へ配属される予定でした。ですが、星刻様はそれは立派な方でしたので、あの方がご自分の元にと。もちろん、星刻様は固辞なさいました。あの方の元に行くことは…今のような状況になることが容易に想像できましたから。ですが、天子様のこと、お家のことで引き受けざるを得ない形に…。本当に口惜しいことですが」
女官は、ルルーシュに事の顛末を語っていた。
ルルーシュは、ようやく星刻の全てを知った。
真実を知らぬとは言え、なんとひどい態度を星刻にとってしまったのだろうか。
「星刻はずっと…」
昨夜の星刻の優しげな態度を思い出すと、ルルーシュの胸はきりっと痛む。
己の理想や守るべきものの為にその身すら犠牲にする星刻の態度は、感心するほかない。
だが、星刻の胸の内を思うとつらくなった。
ルルーシュは星刻と同じように、その身を捧げるように最愛の妹を守るため降嫁したのだ。少なからず、星刻の気持ちがわかるつもりだ。
「天子様!」
二人黙り込んでいると、女官が声を上げた。
部屋の入口に目をやれば、天子がやっと来たようだった。ルルーシュも立ち上がって、いつものように略式の礼を取る。
「ごきげんよう、天子様」
いつもは天子がルルーシュに小さな声で挨拶を返すのだが、今日はいつまでたっても天子からの返事は帰ってこない。
「天子様?」
ルルーシュは不思議に思い、天子を呼んだ。
すると天子は肩をびくっとさせて、おずおずと落としていた視線をルルーシュへと向けた。
「あ、あの…」
「はい」
「オデュッセウス殿下はどういう方でしょうか?」
天子の質問は思いもかけないものだ。
オデュッセウスはルルーシュの異母兄であり、兄弟の中で一番の年長者だ。
政務や軍事の面での才能はほとんどないが、個性的な兄弟が多い中で最もと言っていいほど穏やかな人である。
だが、どうして天子がオデュッセウスのことを聞くのだ。
「オデュッセウス兄上は、穏やかなで争いごとを嫌う方です。ですが天子様、どうしてそのようなことを…」
とりあえず当たり障りのないことを答えたルルーシュは聞き返す。
天子は少しだけ躊躇ったが、口を開いた。
「内々のお話で、あの、まだ言ってはいけないと言われているのですが、あの」
視線をふたたび落として、胸の前でその小さな両手をぎゅっと握りしめる天子。
ルルーシュは、まさか早すぎる、とある可能性に思い至った。
「まさか…」
「オデュッセウス殿下との婚姻が決まりそうだと。そう、高亥や童倫から聞かされて、それで」
以前、天子の教育係を任された時には、いつかこうなるのだろうとは思った。
だが、ルルーシュが中華連邦に嫁してきて半年も経っていないうえ、天子がブリタニアの儀礼を学び始めてからまだひと月もたっていないのだ。
いくら何でも話が速すぎる。
「そんな…」
女官は、あまりのことに絶句している。
それはそうだろう。
ルルーシュがこちらに嫁してきている以上、今回はあちらに花嫁が行くのが筋となってしまう。そうなれば、玉座をどうするかは不明だが天子はこの朱禁城を去らねばならない。
天子も女官もそれを理解しているのだ。
だが天子の口ぶりは、言葉にこそ戸惑いがあるが、握りしめた手や表情はすでに覚悟した者の風情だった。
ルルーシュは、それを見て天子に尋ねてみたくなった。
自分の心を全て決めるために。
「天子様」
ルルーシュは膝を折って天子と視線を合わせる。こうして天子の瞳を覗き込むのは初めてのことだった。
天子は、そろそろと視線をルルーシュによこした。
「天子様は、このご結婚を何のために、お受けするのですか?」
天子は驚きからか、目を丸くしている。
まるで断ることなど考えてもいないという様だ。おそらく、事実、そんなことなど考えていなかったのだろう。
「天子様。私も、政略で結婚しました。できることならしたくはなかった結婚です」
ルルーシュはゆっくりと己の胸の内を話し始める。
「ですが、私には守りたいものがあった。何を賭しても、己の身を捧げてすら守りたいものがありました。だから、この結婚を受けました」
「皇女殿…」
「断れないお話だったことは事実です。ですが、唯々諾々と従ったわけではありません。私は守りたいものがあったから、自分でこの道を選び取ったのです」
ルルーシュはふわりと笑ってみせた。
この無力な身を何度厭うたかは数知れない。だが、その中で常に最善を尽くして生きてきたつもりだった。
だから、晴れやかに笑えるのだ。
結婚を命じられた当時は決して望んだものではなかったが、今では、一部の異母兄弟姉妹たちのように変におごり高ぶった貴人ではなく、認められる星刻の元に嫁してよかったと思っていた。
ルルーシュは、ここで見極めるつもりだ。天子が、星刻の言う様に真に天子足りうる器なのかどうかを。
天子はしばらく、ルルーシュの言葉をかみしめるようにしていたが、しばらくして、言葉を選んで話し始めた。
「私は…。私は、居ても居なくても変わらない天子です」
小さな声だった。
絞り出すように言う天子の言葉は、ルルーシュを少なからず驚かせた。自覚はしていただろうが、言葉にしてルルーシュに訴えるとは思わなかったのだ。
天子はしっかりと視線をあげてルルーシュと目を合わせた。
「でも、この国の天子は、私です。力がなくたって、国を代表しているのは私です。だから、この結婚が、国や民のためになるのならば、私は、天子としてオデュッセウス殿下と結婚いたします」
話しているうちに天子の言葉は力強く、ルルーシュに語る瞳も強いものになった。
その心意気。
『あの方は真実、天子たる器だ。』
そう言った星刻の言葉がルルーシュの耳に蘇る。
いまこの瞬間の言葉だけで、天子をそう判断するのは早計だとは思う。
だが、星刻が信じている天子をルルーシュも信じてみようという気になった。
何よりその心は、帝国を統べる自分の父よりよほど玉座に相応しいものに思えたのだ。
「そのお言葉、しかと心に刻みました」
ルルーシュはそう言って、天子に微笑み、それはそれは美しい淑女の礼をとった。
「皇女殿?」
今までルルーシュはあまり友好的とは言えない、心持ち一歩引いた教授をしてきたので、突然のルルーシュの行動と言動に天子は驚いているようだ。
まだ自分に慣れていないと思っていたが、良く考えてみれば壁を作っていたのは自分の方だったのかもしれない。その証拠か、天子はまだルルーシュを皇女と呼んでいる。
ルルーシュは、いまの天子の決意の言葉で心を決めた。だから、天子に言った。
「天子様、どうぞ私のことは芦花とお呼びくださいませ。夫と同じように、私も貴方の臣なのですから」
それは、ルルーシュ自身が新しい日々を改めて精一杯生きようと誓った言葉でもあった。
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