「おい、アスラン!ちょっと待て!!」
「カガリ!?」
最終決戦へと赴くため、自分の愛機・ジャスティスへと乗り込もうとドッグへと繋がる廊下をアスランが歩いていると後からカガリに呼び止められた。
「私もストライクルージュで出るぞ」
突然のカガリの出陣宣言にアスランは慌てた。
「な、何言ってるんだ!?カガリは自分の立場が分っているのか?」
「お前に言われなくても十分にわかってるさ」
「ならここでおとなしくしていろ!!君にもしものことがあったら…!」
アスランのその態度にカガリは大きく溜め息をついて、呆れたような視線を送る。
「お前、どーせその心配は私になにかあれば、キラが気にするとかそういうことだろ?」
「なっ…!」
それがまさに図星であったアスランは二の句が継げず、黙ってしまい、バツが悪そうにカガリから顔を背けた。
「はあー。お前のことが好きだと一時でも思ったわたしが馬鹿だった…」
カガリはさらっと重大なことを告白した。それを聞いたアスランは、寝耳に水とばかりに即座にカガリを振り返った。
「カ、カガリ…?」
「あ?なんだ?そんなに驚くことか?」
アスランは金魚のように口をパクパクさせながら、やっとのことで目の前にいるカガリの名前を呼んだ。
そしてカガリの質問には、もう首を縦に振ることでしか自分の意志を示せていない。
「あー。ほら、よく言うだろ。
動機が激しい時に出会うと、一緒にいた人物が好きだと勘違いするとかって。
あれだ、あれ。陸橋…、いやそれともつるはし…」
なんだか投げやりになっているカガリの説明に、ようやく自分を落ち着かせることのできたアスランは冷静にカガリの言葉に突っ込んだ。
「それは吊り橋効果のことか…?」
「あ、それだそれ!」
そう答えながら、ぽんっ、と手を叩いたカガリに思わず頭を抱えてしまったアスラン。
そんな姿のアスランをカガリは豪快に笑い飛ばして、一旦、笑いを収めると真剣な面持ちになった。
「まあ、お前のことをそう思ったことがあるのも事実だが、気のせいだった。
それより私にとって遥かに大切なのはキラのことだ」
いつか見たかのような揺ぎないその瞳にアスランは自分の目を逸らさなかった。
「あれは私のたった一人の家族だ。公には私はあいつを妹としてあつかうことはできないが、私の力が及ぶ限り、どうにかしてあいつを幸せにしてやりたい」
ウズミにオーブ脱出の際に渡された写真により、カガリとキラが双子の姉妹である可能性がでてきた。
それは可能性でしかないのだが、カガリは持ち前の直感力によりその可能性を真実であると確信していた。
だがカガリの次期オーブ代表という立場を考えれば、そんなスキャンダルを公に出来るはずがない。
カガリとてそのことを重々しているからこそ、公にはキラを妹として扱うことはできないと言ったのだ。
しかし、その後”私の力が及ぶ限り”と、まるでアスランを試すような視線とともにカガリは言葉を続けた。
「お前にはキラを幸せにすることができるのか?」
そのあまりに直球な言葉にアスランは呼吸を整えると、今まで以上に真剣な表情でカガリと向かい合った。
「あいつが幸せだと思ってくれるかどうかは分らないし、絶対だなんて約束はできない。
だが、俺は…」
そこでアスランはいったん言葉を区切って瞳を閉じた。そしてその瞳を開いて、力強い視線と共にこう言った。
「これから先、キラがずっと笑っていられるようにしてやりたい」
アスランの答えを聞いたカガリはしばし考えるような姿を見せた後に一言。
「たよりない答えだが、ま、まあまあってところか」
「カガリ…」
アスランにとっては精一杯の言葉であったのだが、カガリに「まあまあ」と評されてしまった。
しかし、カガリは言葉とは裏腹にすがすがしい笑顔を見せて片手を差し出してきた。
アスランはそれに驚いたが、すぐにカガリが自分ことを認めてくれたのだと気づき、自分の手を重ねた。
「それに、キラはどうしてもお前じゃなきゃダメみたいだしな…。
お前、分ってるだろうけど…死ぬなよな」
そして最後にカガリは、アスランにそう言い、アスランも一言だけ。
「ああ」
と短く、だが誓いのように答えたのだった。
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