鳴り響く警報に艦内の空気が緊迫したものに変わる。

「サクラ、先生の言うこと聞いていい子にしてるんだぞ!」

医務室にサクラを抱いて駆け込んできたシンは、レイに急かされながらもサクラへの注意を忘れない。
医師としてシンの傍にサクラを置くことを推奨したのは医師自身だったが、無理を言って乗船許可をもぎ取ったエースパイロットの行動には眉を顰めていた。 しかし、このように仲むつまじい様子を見ているにつれて、そんな気持ちも融解されてしまったようだ。
今はもう、本当の兄妹のような二人の明るい未来を願うばかりだ。
それはミネルバに搭乗する船員たち全員の気持ちの代弁でもあった。

サクラはそんなシンの言葉にニコニコして頷くと、いてらっしゃい、との意味を込めて手を振っている。

「早くしろ、シン」
「分ってるって!先生よろしくお願いします!」

鋭いレイの言葉に子供のように返すシンは、それでも医師へ一言かけ、 開いた扉の向こうで待つレイの元へと取って返す。

「行ってくるよ、サクラ!」

シンはもう一度室内へと視線を戻すと、サクラに手を振る。
隣に居るレイも微かな微笑をサクラへ向けた。
そして今度こそ扉が閉まり、二人は出撃するために愛機の元へと急ぐのだった。



『インパルス、セイバー発進願います。ザクは別名あるまで待機して下さい』
コアアスプレンダーにすでに搭乗していたシンにメイリンの声で指示が与えられる。 そして、その指示が終わると同時に通信回線が開き、アスラン・ザラの顔が映し出された。

「シン・アスカ。発進後の指揮は俺がとることになった」
「えっ…!」

サクラの乗船許可を与えてくれた人物であるため、シンにとっては恩人ともいえなくは無いアスラン・ザラ。 だが、シンの中にはいまだにオーブへの禍根が根強くあり、それがオーブ代表を庇い立てしていた彼に対して複雑な感情を抱かせていた。

「いいな?」

そんな理由から、どんな態度で彼に接すればいいのか判断のつきかねるシンは咄嗟に不満げな声をあげてしまっていた。
それがアスランにはシンが自分の指揮下に入りたくないためのものだと映ったらしい。 もう一度、念を押すように問われてしまった。

「…ハイ」

シンには全くもってそんな不満などは無かったのだが、勘違いされたことは彼にとっておもしろいものではなかった。 そのためか、ぶっきらぼうにしかシンは返事を返せなかった。

「クスクス―ほんとにもーシンは子供ね」

何処か呆れたような表情のアスランが通信回線の画面から消えると入れ違いにルナマリアが回線を開いてきた。 どうやら先程のやり取りを聞かれいたようだ。

「別に、俺は…」

ルナマリアのからかいに本格的にへそを曲げ始めたシンはそっぽを向いてしまう。 そんな態度はまさに子供そのものなのだがシンは気づいていない。
教えてやってもいいとルナマリアは思うのだが、これもシンの持ち味だと彼女は考えているので当分の間は放っておく方針だ。

「サクラもなんだかんだで、シンより彼の方が良いみたいだしね」
「どういう意味だよ、ルナ」

じと目で回線越しのルナマリアを睨むシンの目は結構いや、かなり本気だ。

「あの子、やっぱり女の子よね。カッコイイ人に目が無いって言うか…
今のところ、1番レイ、2番目が隊長、シンは3番目ってとこじゃない?」

ルナマリアの言葉にシンの機嫌はますます下向していく。
それでもシンの目の中に真剣に悩むような色合いをルナマリアは見つけた。

(あら、ちょっといじめすぎたかしら…)

これで戦闘に支障がでるようであれば洒落にならない事態である。
だから彼女はフォローも忘れなかった。

「でも、”おにーちゃん”ならシンが一番じゃないかしらね?」

それまで絵に描いたような不機嫌に加えて、不安をみせ始めたシンであったが、ルナマリアのそんな一言に、現金ではあるが気分が浮上してきたらしい。

「そっか…」
「そうよ!だからほらッ、シャキッとしなさい。早く終わらせてサクラの所に戻ってやるんでしょ」
「うん…」

ルナマリアに言われた言葉でサクラのことを思い出したのか、シンの口元が綻ぶ。
その微笑を見たルナマリアは、もう大丈夫であろうと確認し回線を閉じた。

(サクラ…)

操縦桿を握る自分の手のひらを見つめたシンは、闘志を込めるようにギュッと握り締めて、あらたに操縦桿を握り締めた。

「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!!」



※諸事情によりアーモリーでの強奪事件の発生をC.E.74とさせていただきます。
よって、今現在アスラン・ザラは19歳です。