「馬鹿か、お前は」

開口一番、きつい一言をシンに放ったのは、シンの暴走を止めるストッパーの役割をしてきたレイであった。

「・・・・悪かったな」

所用でミネルバ離れていた時に起こった事態を、帰ったそうそうタリアから嫌味交じりに聞いたレイはすぐさま部屋に戻り、 その現況であるシンを問い詰めていた。
シンもアカデミー時代から共に生活してきたレイには口で勝てたためしが無く、ふてくされた表情を隠そうとしないながらもその叱責を甘んじて受けている。

「はぁ・・・で、本当に養子にする気か」

あらかたの説明を艦長から聞き及んでいたレイは、どうやら1番そこが聞き出したいところであったらしい。 しかし、あまり反省の色も見られないシンを見ているうちに呆れたような気持ちになり、溜め息と共にシンへ問うた。

「俺はそうするつもりだったけど・・・ザラ隊長が・・・」


『ミネルバへの乗艦は許可されたのだし、そう早まることはしなくてもいいんじゃないか、シン。
 それに・・・ この争いが終わった後でも遅すぎるということはないだろう』  


「―ってさ」

シンは、その時のアスランの苦笑しながらシンに諭すような口調でそう説いた姿を思い出し、何ともいえない悔しさに唇を噛んだ。

「シン、そうやって唇を噛むな。・・・まあ、それが一番いいだろうな」

シンが噛み締めている唇に近寄ってきたレイがそっと触れ、傷にならぬ内にその力を抜かせた。
これは、アカデミー時代から変わらぬ風景。癇癪を起こしやすい子供のようなシンは、何かあると直ぐに唇を噛む習慣が付いていた。 当時、同室であったレイが目ざとく見つけ、傷にならぬようにと見つける度に直してやっているのだ。

「なっ・・・レイまでそんなこと言うのか!?」

眼前にある冷たい美貌を見つめたシンは、かすかに怒りを込めた瞳で彼を睨んだ。

「別にお前がサクラを養子にしようとすることに反対している訳じゃない。 ただ、時期があるだろう。今はまだ戦時中で、ここは軍艦だ。 家族ができたとしても、すぐにその家族においていかれる可能性がないわけではないだろう」
「それは・・・」

レイの言わんとすことはシンには分った。
そう家族を亡くしているシンにはすぐに。
たとえ、今サクラを自分が正式に家族に迎え入れたとしても、自分がサクラの傍に居られなくなる可能性だっって在るということが。
先程は、自分がサクラを守るとい想いが強く自分のことなどすっかり失念していた。

「わかっただろう?サクラを一刻も早く引き取りたいなら、早くこの戦争を終わらせることだ」

そういったレイはまるで幼子にするようにシンの頭に手をやった。

「ちょっ、レイ!俺はサクラじゃないんだから!  ・・・うん。そうだよな・・・戦争を終わらせれば・・・」

さすがのシンもレイのその行動には抵抗を示した。しかし、その言葉をしっかりと受け取り、戦いの終結への思いを新たにするのだった。