「さあ、キラ。薬だよ」

僕の体調は何故だか最近良くない。
戦時中の後遺症かなと最初は思ってた。それなら精神的なものもあるだろうから、と特に気にもしていなかった。
けど、僕の体調は一向に回復する兆しを見せなく、外出も満足にできない日々が続いていた。
一緒に暮らし始めたアスランは何くれと僕の世話を焼いてくれて、申し訳無く思っていたけど、アスランのその姿は月で穏やかに暮らしていた あの頃を彷彿とさせて、くすぐったい懐かしさが僕の心を満たしてた。

でもね、いつからだろう?食後に持ってくる薬を僕飲んだのをしっかりと確認していくアスランに気づいたのは。
いつかだだろう?薬を飲むと必ず襲ってくる倦怠感に違和感を覚えたのは。
いつからだろう?アスランが頻繁に謝ることに気が付いたのは。


アスランは僕が知らないと思っているけど、僕は知っているよ。
本当はそれが薬では無いことくらい。
あの口に残る砂糖菓子のように甘い、おかしな味の薬。
本当は薬でなんてないんだよね。

「ほら、キラ。薬」

今日もアスランは”薬”を持ってくる。ちょっと翳った眼をして。
まただ。今日もアスランは僕が薬を飲むのを待っている。
そんな彼の様子を僕がじっと見つめているとアスランは呟く。

「キラ・・・・すまない」

ほら、アスランはまた謝った。
いいよ。
僕がこの”薬”を飲むことが君の望みであるならば、僕はそれを叶えよう。
あの戦争でに君を裏切ってしまった僕に出来る罪滅ぼしはこの位。
罪が赦されるわけでは無いけれど、僕は君にゆるしてほしい。
君も”薬”を僕に与えることをゆるして欲しいと、瞳で僕に語りかけてる。

ゆるし、ゆるされ。

穏やかなあの日にはもう戻れないから。
君と共にこれからを、そう、生きていくと決めたんだ。

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*サンダーソニア*望郷