花姫転生の星刻
＜悔恨輪廻＞

満足しきった、美しいほほえみ。
頻繁に逢瀬を繰り返し同じ道を進んでいたあの頃は、その黒髪よりも暗い漆黒しかまとわなかった君が、まるで人が変わったかのように覇道を進む際に身につけていた純白の衣装。

その胸が、まるで大輪の牡丹が咲いたように真っ赤になった。

そうして、ようやく悟った。

あの白は、君の死に装束であったのだと。

君の願いは知っていた。君が託した思いもしかと受け取っていた。

本当は、受け取りたくなどなかった。
すべてを捨てて、君を選びたかった。

だが何よりも理性を優先して生きてきた私は、理性を捨てて感情のままに走る術を知らなく、結局、物わかりのいい男のふりをして、君ではなく世界を、主君を選んだ。

君が残した世界で生きる時間、胸の中で何度悔恨をつぶやいたかわからない。
それでも口には出さなかったのは、臆病だった私への戒め。
せめて、君が望んだ世界の基礎を確固たるものにすることが、私にとって自己満足の罪滅ぼしだった。

残り少ないとわかってる時間が、私にとって安らぎだったと言ったら君は怒るだろうか。
君のいない世界で、君が礎になった世界に生きることは…贅沢だが、私には苦痛になってしまったのだから。

なぁ。
もし、もし次の生というものがあるのなら。
その時こそ、君を誰よりも、何よりも一番に考えて、私の世界の中心にして生きよう。

君は、私の―――。

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Requiem for〜のジェレミア
＜忠誠の在り処＞

「では、息災でな」

無意味な言葉だと思いつつも、私は微動だにしない男に声をかけて、その場を去った。

やはり、貴方が危惧していた通りになってしまいましたね。

背を向けた先にいる、もう答えを返してくれることのない主に心で話しかけた。おそらく、あの方は、苦く笑って「仕方がない奴」だと仰るにちがいない。

あの男は、本当に幸運な男だ。
あんなにも、あの方から気にかけていただいていたのだから。

あの男の唯一無二の主であり、私の主でもあった、あの方はもういない。
だが私は、あの男のように、この世界に絶望することはないだろう。
私は、この世界で少しでも幸福を感じられるように生きていく。
主を蔑ろに思っているわけではなく、主を敬愛しているからこそ、そう生きていくのだ。

私とあの男では、あの方に捧げた忠誠の所在が異なった。
もちろん、それは、忠誠を受け取ってくださったあの方の中でもそうだっただろう。

だからこそ、あの方は心から私の幸福な人生を願い、あの男にもそう願いながらも最終的な命令をくださなかった。

本当に、あの方は得難い、至上の御方であった。

私は、あの方の願われたとおり、この世界で幸福な人生を歩み始める。

ルルーシュ様。来年は、その幸福の証としてたわわに実ったオレンジを献上しにあがりますよ。
ミズ・サヨコと、アーニャがその準備をしていますから、きっと来年には。

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R2最終話後ナナリー
＜お兄様へ＞

お兄様。
こうしてお兄様に手紙を書くことになるなんて、思ってもみませんでした。
だってお兄様はいつだって私のすぐそばに居てくださったから、気持ちを文章にしたためる必要なんてありませんでしたもの。
けれど、こうしていま私が書き綴った言葉もお兄様には永遠に届かないのですね。

ねえ、お兄様。
私はお兄様さえいればよかった。
その気持ちに嘘偽りはありません。
けれど最近になって、お兄様がいないことにホッとしている自分に気づきました。
誓って、お兄様が疎ましかったわけではありません。

お兄様はいつだって私を優先してくれました。
あの地獄のような戦場ですら、お兄様は私を守ってくれました。

いつだって優しかったお兄様。
そんなお兄様に疎んじられることが私はこの上もなく怖かった。
疎んじられるかもしれない自分自身が何よりも嫌だった。

心底私は、お兄様の足かせにしかならないこの身がいとわしかった。

あのダモレスクでお兄様が私に投げた言葉は、真実だったのか、偽りだったのか。
偽りであってほしいと願いつつ、真実であっても仕方がないとも思っています。
けれど、お兄様の真実を確かめる術はどこにもありません。
永遠にその真実が明かされる日は来ない。

だから私はホッとしているのです。
なんのしがらみもない状況で、お兄様の口から私への真実が語られる日。
その日が決して来ないことに私は心のどこかで安堵をおぼえました。

本当にひどい妹ですね。
お兄様が愛想を尽かしても仕方がない妹です。
ですがお兄様。
お兄様を慕う気持ちだけはどうか信じて下さい。

愛しています、お兄様。

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