※スザルルで、シュナマリ前提
学園祭時にシュナ様とルルが再会して、ルルが”ルルーシュ・ランペルージ”としてシュナと婚約する話。
二人の会話は婚約パーティー後、数日経ってからのこと。
「ところで殿下、ランペルージ嬢とのことどうするんですかぁ?」
「決まってるじゃないか。私は結婚するよ。彼女と」
「今さらですけど…殿下には倫理観がないんですかね…腹違いとはいえ妹君でしょ」
「おや?君も気づいていたのか」
「会場に来ていた大半の人は気づいたと思いますけどね…あれだけマリアンヌ様にそっくりなんですから」
(でも貴方が恐ろしくて意見なんてできなかったんですけどね)
「コーネリアにも何の茶番だと言われてね。だがルルーシュの望みを叶えるためには私と結婚することが最適なんだよ」
「…殿下がそんなにも妹君想いだとは知りませんでしたよ」
「ルルーシュは特別さ。彼女はマリアンヌの娘だからね」
(ああ、そういえば殿下の初恋はマリアンヌ様だったか)
「ルルーシュは姿かたちもマリアンヌに生き写しだが、人を愛する術すらもそっくりだ」
「は?」
「最も愛する者のためには躊躇わず自らをも犠牲にする…本当にあの子はマリアンヌの娘だよ」
「それはランペルージ嬢…いえルルーシュ殿下が誰かのために貴方と結婚するって意味で?」
「ふふ。あの子は、愛する者が一番望むもの…祖国を返してやりたいのだそうだよ」
「それって…もしかして」
「可哀想に、あの子は泣いていてね。只人である今の自分にできることはなく、例え皇族に戻ったとしてもユーフェミアのように彼が望むものを与えてやる力はない、とね」
「………」
「だから、私が与えてやるのさ。あの子がそれで幸せだと言うから、あの子が愛した者の国を返す力と地位を」
「…そして貴方はマリアンヌ様の雛形を得るのですか?」
「それは言いがかりだ、ロイド。別に私はあの子を雛形にするつもりはない。ルルーシュはルルーシュでしかないからな」
(それでもただ貴方が皇位を継いで、殿下の想い人の祖国―イレブンを返してあげればいい話じゃないですか。やっぱり心のどこかで貴方はマリアンヌ様の姿を追い求めてるんですよ。
ですけど、この人は本当にやることが周到だ。わざわざ自分とは関係ないランペルージという名前を使って殿下を自分の妻に持ってくることから、それだけこの人が殿下を愛してらっしゃると周囲に牽制することができる。マリアンヌ様の二の舞にはさせないということか)
「…なあ、ロイド」
「はい?」
「私は羨ましいよ、ルルーシュにそこまで想われる者というのが」
「……はあ」
「そして、呆れるよ。ユフィを悪く言うつもりはないが、どうしてルルーシュを差し置いておけるのか。私にはわからないよ」
「……」
(っていうか枢木准尉って”騎士”の意味よくわかってないんだよね。会場でルルーシュ殿下の隣に立つ貴方のこと射殺さんばかりに見てたんだから…間違いなく殿下と准尉って相思相愛だと思うんだけどな)
「ところでロイド、ランスロットの補正予算のことなんだが…ロイド?」
「あ、失礼しました。殿下、許可してくださるんですかあ!」
(でも准尉にこの人の機嫌損ねられると困るんだよね。デヴァイザーも彼以外見つかんないし……てかこれもめぐり合わせだと思って准尉には諦めてもらうしかないよね)
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シュナマリでクロヴィス視点
いつだったかは思い出せないけれど、いつものようにルルーシュとチェスをしに行った日のことだった。
ちょうどルルーシュと私の勝負にひと段落したとき(その日も私の負けだった)、シュナイゼル兄上がアリエスの離宮へやって来た。
まるでタイミングを計ったかのように、マリアンヌ様のタルトも完成して、ナナリーやユーフェミアも人形遊びをしていた二階から降りてきて、テラスにて皆で菓子と茶を囲んだ。
相変わらず、マリアンヌ様の菓子はおいしくて、私は味わって食べていた。その時、ちょうど真正面に座っていたルルーシュに、その隣にいた兄上が今日のチェスの勝ち方を聞いていた。ルルーシュが不承不承と言うように答ると、兄上は少し考える素振りを見せて、「もしこう打たれていたらどうした?」と言った。
その時のルルーシュの、悔しそうな顔。
兄上を勝気な瞳で見据えると、眉間に皺を刻んで真剣に考え始める。
おそらく、兄上への切り返しの一手を探していたのろう。
兄上とは反対側のルルーシュの隣に座っていらした、マリアンヌ様はそんなルルーシュの様子に思わずといった感じで笑った。そうすると、兄上もマリアンヌ様の笑みにつられたように優しい笑顔を見せた。
私はその時に理解した。
ああ、兄上のたった一人の方はマリアンヌ様なのだな、と。
兄上は、昔からとても優しかった。
だが、その優しさが兄上の本当の優しさだとは思っていなかった。なんとなくだが、兄上にとって私は「お気に入り」の域をでない人間でしかないと理解していた。兄上の中には踏み込めない領域があって、私だけではなく、兄上の母君や乳母、学友も誰一人として兄上の本当の心のうちには入れないのだと思っていた。
唯一、アスプルントのロイドだけが、兄上の中で特別な位置にいるようだったが、それでも兄上を心から動かせる人間ではなかったようだ。
だが、目の前にいた兄上はどうだろうか。
兄上がマリアンヌ様を見つめる目は、いとしさに溢れていた。優しさに溢れていた。
まるで、仲の良い一組の家族のように、物語に出てくる幸せの見本のような家族のように、そこには優しさが溢れていた。
私はそこに、本当の家族の姿を見た気がしていた。
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マリ様とCCの通信
ねえ、CC。あの子は、本当に大丈夫かしら?
そばにいてやれないぶん、とても心配なの。
貴女はとても頼もしいから、貴女を信頼していないわけではないの。
貴女は約束も守ってくれているし。
ただ…。
ルルーシュはね、とても頭がよくて、大人びている子。
だからとても心配なの。
あの人と一緒で、頑張りすぎることを何とも思っていない子だから。
なんでも背負い込んでしまう子だから。
今更、私がこんなことを言うのを貴女は奇異に感じるかもしれない。
あの頃、私が願ったものはあの人の幸せだけだったから。
本当は、私が傍であの人やあの子を守ってやれればいいのだけれど。
それももう叶わない身。
あの人についてやってなんて、言わないわ。
あの人には、私と貴女の約束の加護があるでしょうから。
だからね。
あの子についてやっていて、CC。
あの子、本当は弱い子だから。
あの子が自分の願いをかなえるその日まで、傍にいてやってね。
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