「もしもし、お兄様?」
お兄様。
聞こえているのでしょう、お兄様。
クルルギ卿は、私が何も知らないと思ってお兄様に電話を変わったのです。
でも、私、全部知っています。
お兄様が何をなさっていたのかも、お兄様がいまどういう状況にあるのかも。
だから、どうか。
「お兄様なのでしょう? 私です、ナナリーです」
どうか、どうか。
今は、私を知らぬふりをしてください。
クルルギ卿に、お兄様が記憶を取り戻したことを知られないために。
お兄様がなさりたいことを、今度こそ成就できますように。
「総督としてそちらに…あの…聞こえていますか、お兄様?」
総督として、今度、私はエリア11に参ります。
お兄様もお分かりでしょう? ええ、全部、皇帝陛下の命令です。
ゼロがお兄様だった場合、ブリタニアの象徴である総督を殺せないようにするために。
でもお兄様。私のことで心を止めないで。
お兄様、私、お兄様のためにならこの命惜しくはないのです。
お母様が命を懸けてこの世にとどめてくれた命だけれど、私が今日まで生きてこれたのは全部お兄様のお陰ですから。
私、世界が優しいものであってほしかった。
お兄様に優しい世界に。
「ナナリーです」
例え、クルルギ卿の夢見る世界が私が望んだ世界でも、そこでお兄様が笑えなければ私には何の意味もありません。
今の私の望みは、お兄様が願いをかなえること。
だから、お兄様。
どうか、総督となるナナリーを殺しにいらしてください。
総督として、お兄様に全て有利になる状況を必ず整えて見せますから。
お兄様のためになら、人にあらざる者にだって、私、なってみせますわ。
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